島 -island-
ポドロ島
ポドロ島はどのくらいの規模の島なのか、実際に上陸してみないと皆目見当がつかないだろう。まわりに比較の対象となるべきも のがなく、水平線上にまるでフィート尺を浮かべたようにも見える。僕もこれまでに何度も訪れたことがあるが、島の全長が百ヤード 程度か、それとも二百ヤードはあるのか、今もってはっきりしない。もっとも、あんなところへはもう二度と行きたくないし、大きさ なんてどうだっていい。
僕らは岩がちな海岸から数フィート離れたところに錨をおろした。ポドロ島は今がまさに見ごろの、緑したたり、花咲きみだれて 、来客を歓迎しているようにも見えた。島の片側はゆるやかな半円をえがき、反対側は海岸がまっすぐに伸びている。空から見おろせ ばきっと上弦の月の形をしているに違いない。海面の高さから島を望むと、後方は草木に覆われた土塁が盛り上がって、まるで劇場の 観客席のような姿をしている。細くしなやかなアカシアの木は海岸近くでは情景に興を添えているが、島の奥ではこんもりと密生して 濃い翳を落とし、不気味な雰囲気を醸し出している。ゴンドラに腰をおろした僕らは、ちょうど客席から無人の舞台を眺めているよう な按配だった。
『ポドロ島』 L・P・ハートリー/今本 渉 訳
ポドロ島はイタリアのアドリア海に浮かぶ小さな孤島。そこを訪れた二人の男と一人の女。のどかで寂しげな風景の中にじわじわと 狂気めいた予感が浮かび上がってきて、やがて恐ろしい何かがその島に現れる。
幻想・怪奇の島のアルバム・トピックです。
2010年01月25日 23:25 by progfanta
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