雪の幻、それは現か2(小説)
惟盛×望美です。
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あの人は雪が好きだったというのは、少しだけ寂しそうに笑った敦盛さ
んが、帰り際に教えてくれたことだった。みんなが別れの言葉を口にす
る中で一人だけ、惟盛さんのことで、自分の知る限りのすべてを伝えて
くれた。敦盛さんも惟盛さんのことを慕っていたらしい。
『もしも貴女が再び彼と見えたら、一言だけ伝えていただけるだろうか
――お慕いしておりました、と』
最後の最後に敦盛さんはそんな言葉を私に残した。敦盛さんはたまに
不思議なことをいう。もう一度彼に会えるなんて……そんなこと、あるわ
けないのに。
家の前の道に立ってまだ降り続ける雪を見上げる。
雪はいつも真っ白だ。
まだ足跡のない何処までも白い世界はとても美しい。きっとこんな白が
本当に純粋な白なんだと思う。
そっと降り積もった雪を掬いあげる。掌の体温で解け始めた雪が指の
隙間から水となって流れていく。雪解水は私の穢れてしまった手を清めて
くれているようで、なんだかとても心が凪いだ。
もう一度あなたに会えたらいいのに、あなたが好きだったという雪を、あ
なたと一緒に眺められたらいいのに。
そんな叶うはずもない願望ばかり胸の内を満たしていく。
掌に乗っていた雪はもう跡形もなく、指の間から零れた最後の一滴は
零れ落ちた涙と混じりあって雪に落ちた。
「――――神子殿」
白い世界に、柔らかい声が響く。
「…………神子殿」
幻聴が聴こえ始めたのかと、自分の耳を疑った。
「神子殿」
近付いてきた声と共に、後ろからそっと伸ばされた指先が頬に触れ
る。あたたかい指先に震えながら、私はゆっくりとゆっくりと後ろを振
り返った。涙で滲んだ視界に映ったのは、優しく微笑む人の姿。
「やっと……逢えましたね、神子殿」
愛しい愛しいと戀(こ)い続けた人が、そこには確かに立っていた。
終
はじめまして月影様!!
管理人の菅原です。
月影様の書かれる小説は、文章が綺麗で素敵ですね!!
読み耽ってしまいました。
惟盛、いいですよね・・・www
てっそが好きな惟盛も、怨霊になる前の惟盛も好きですvvv
素敵な小説、ありがとうございます!!
これからもよろしくお願いいたします。
2008年03月08日 21:06 by 菅原紫乃
【後書き】
皆様、初めまして、月影と申します。
初投稿なのでノーマルCPで書かせていただきました。
(本業はBL書きというのは秘密です。)
マイナーCPですが……これが月影の一番好きなノーマルCPです。
惟望は源平の時代だとあまり幸せになれないので、大抵は現代で書きます。
ちなみに二番目に好きなノーマルCPは景時×望美です。
今回書いた話は月影の惟望の原点です。
此処から現代で二人、ほのぼの仲良く暮らしていけたらいいなあ。
こんな月影ですが、どうぞ宜しくお願いいたします。
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