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お題作文 『ご利用は計画的に』

ズバリ、題名が
『ご利用は計画的に』
である文章です。

もう既に、皮肉な結末に終わるショートショート臭がぷんぷん漂うテーマです(笑)。

2008年08月25日 11:34  by 石瀬醒

コメント一覧 8件中、1~8件表示

  • 石瀬醒様

     コメントをありがとうございました。
     今回の話は、何の役にも立たず、ただ大迷惑だけを撒き散らして消える悪魔をメインに、勢いだけのバカバカしい物を狙ってお りました。
     確かに、迷惑なほどに悪戯好きのコスプレ娘が、どこかから持ってきたブザーを道に置き、拾った人間がいたら、こっそり後を つけて……というのも面白いかも知れませんね。こちらは、全く考えも及びませんでした。
     一人称小説で、主人公は酔っ払いですから、ただ爪先立ちしただけなのを、宙に浮いたと勘違いしたのかも知れません。

     こんなおバカ話を色々と広げてくださって、有難う御座います。
     また何か面白いネタを思いついたら、参加させていただきます。
     お題も考えておきますね。

    2008年10月13日 21:48 by 浅葱 宵

  •  面白かったです。
    もちろん、ネタとしての斬新さというのは大切ですが、どこが“面白いところ”か明確な文章を書くということは、とても大事だ と私は思います。
    特に、ネット上には独りよがりな文章が氾濫していますから、ハッタリ過多の上辺スタイリッシュな文章には食傷してる人も多い と思いますので。

     3つの願いを空しくさせる悪魔は数多くいましたが、今まで僕の読んだものは、少なくとも超自然的な力を見せてはいました。
    「ビールを飲ませてくれ」と言われれば、虚空からビールをつかみ出す位の事は。
     その点この悪魔娘はすごいです。
    コスプレして、酔っ払いが通りがかるのを待って、ベルを置いて、持ち帰るようなら後を尾けて、窓の外に待機して、押したら飛 び込んで出鱈目言って帰ってくるというイタズラを考えたただの変な人間である可能性すらあります。
    あ、最後にふわりと浮いているか…
    まあ、でも、あやしいですね(笑)
    大抵の者はその場でボタンを押すので、彼女はその辺りの電柱にワイヤーでも結んで、空中に浮かんで芸を披露していたのかもし れないですね…
    すみません、勝手に妄想を広げてました(笑)

    では、出題もお願いしますね!

    2008年10月12日 23:18 by 石瀬醒

  •            (下から続いています)

     彼女は俺の机に座り、長い脚を優雅に組んで、胸元から取り出した銀色の懐中時計を見詰めて時間を計っていた。すんなりと伸 びたつま先が、リズミカルに揺れている。
    「……はぁ〜い、1分経過。残り4分……」
    「何だ……ちょっと待ってくれ……いきなり言われても……ちょっと考えさせろ!」
     時間をカウントする彼女に、俺はイライラして声を荒げていた。
    「……はい、ちょっと待った…………はい、ちょっと考えさせた……」
     まるで幼い子供が友達をからかうように、彼女は俺を見て笑った。
    「……2分経過……残り3分……」
     俺は少し焦り始めていた。元々、そんな望みを三つ叶えるなんて、ありえない事なのだから、そこで諦めれば良かったのかも知 れない。けれど、何となく無駄にするのが勿体無い気がして……それならば、と必死で考えていた。
    「ちょっと、ビールでも飲ませろ。頭が回らん……」
     俺は彼女の返事も待たずに、完全破壊された窓のガラスを踏まないように気をつけながら、キッチンへと行き、冷蔵庫から缶ビ ールを取り出して戻った。直ぐにタブを開けて一気に流し込む。
    「はい、3つのお願い、完了〜」
    「え? 何も言っていないだろ? それに、時間だってまだ……」
    「一つ目は『ちょっと待て』って。二つ目は『ちょっと考えさせろ』、で、三つ目が『ビールを飲ませろ』って。叶えてあげたで しょう?」
    「ふ……ふざけるな! そんな事の為に窓ガラスをこんなにしやがって! 直せよ!」
    「ダメ。それはもう4つ目のお願いでしょ? それは受付不可」
     彼女は黒い翼を広げ、ふわりと宙に浮いた。
    「次があるかは知らないけれど。ご利用は計画的に、ね?」
     色っぽいウィンクと投げキスをして、彼女は窓の外の闇へと飛び立ち、消えた。

    ……………………………………………………

     長い割にはありきたりな話になってしまいましたね……精進します。

    2008年10月12日 09:58 by 浅葱 宵

  •  夜中にふと目覚めると、指先に何か硬いものが触れた。何気なく引き寄せると、それはファミレスで店員を呼ぶためのブザーのよう な、押しボタンだった。
     僅かに疼く頭で記憶を手繰ってみる。俺は仕事帰りに友人達としこたま飲んで、ふらふらになって帰宅する途中、近所の路上で 何かを蹴飛ばした。何だと思ってみると、この押しボタンだったのだ。
     何故そんな物が道に落ちているかなど考えず、何となく面白そうで持ち帰ったのだった。
     枕元の電気スタンドを点け、身を起こしてそのボタンを見た。半球形の金属の上に、白くて丸い、十円玉くらいの大きさのボタ ンが一つ。そして、金属部分には、『困ったら、これでアタシを呼んでね』とマジックで書き込まれていた。
     何が困ったら押してだよ、と思いながら、俺は無意識のうちにその天辺のボタンを指で押し込んだ。
     途端。俺が寝ていたベッド脇のガラス窓が、爆発でもしたかのように内側へと大破した。本能的に頭を庇うように両腕で抱え込 み、一旦身を伏せる。恐る恐る顔を上げると、そこには……黒い翼を背に生やした、超絶的に色っぽい美女が立っていた。
    「はぁ〜い。お呼び〜?」
     首を傾げ、片手で乱れた長い黒髪を肩から振り払いながら、美女は艶然と微笑み、少し掠れ気味の甘ったるい声で言った。腰に ズンとくる甘さに、俺は思い切りうろたえていた。
    「何だ、お前は!」
     我ながら、こんな陳腐な言葉しか出てこない。何だも何も、こんな翼を生やした人間がいる訳ないのに……。
    「私? 誰だって良いじゃない。それより、私の押しボタンを拾ってくれた貴方に、お礼として、3つのお願いを叶えてあげる為 に来たの。制限時間は5分……それから、幾つでも望みがかなえられるように、とか、何でも望みの叶う魔法を身に着ける、っていう のはダメよ。それじゃ……用意……スタートォ〜」
     彼女は一度手を上に上げ、スタートの言葉と同時に手刀を切るように振り下ろした。

                     (済みません、続きます)

    2008年10月12日 00:14 by 浅葱 宵

  • 長い割りにテーマが不鮮明になってます。
    「ご利用は計画的に」というより、「用法・用量を守って正しくお使いください」になってるし。
    色々反省です。
    このテーマ、再チャレンジします。

    2008年08月28日 11:58 by 石瀬醒

  • 3

    心臓がどきどきしている気がする。だとすれば「赤」だ。
    頭が痛い。これは「青」だ。

     落ち着け。
    俺は考えた。
    奴はまだ俺がスパイだという決定的な証拠を示していない。いや、そうと断定すらしていない。
    これは試しているんだ。
    奴等にも、確信があるわけではないんだ。
    奴等の使用する毒物が分かっている以上、潜入者は必ず解毒剤を用意して来る。奴等はそれを利用して裏切り者だけを殺している のではないか?
    毒が入っていることを匂わせて、偽りの自覚症状を感じさせ、解毒剤を持つ者を自滅に追い込む手なのではないか?
    俺は、無意識に腕時計をいじっていた右手を引いた。

     「解毒剤があるなら、飲んだ方がいいぞ」
    『一位の者』が揺さぶりをかけてくる。
    「解毒剤そのものが毒であることを利用して、我々が罠を仕掛けていると思っているのか?
     そんな単純なトリックに、君たちの仲間が残らず引っかかったと思うかね?」
    「何を言っているのです?私は何も…」
    「むしろ、彼等は君のように考えすぎて、自らの体の異変に気付かなかったのではないかな?」
    そうかも知れない、いや、だとしたら奴等は“誰が潜入者か知っている”、解毒剤を飲んだところでいずれ殺されるのだ。
    第一、こちらが解毒剤を持っていることを奴等が知っている以上、毒を生き延びても奴等に隙は生じない。無駄だ。見破られてい るという仮定に立っては、何の希望も見出せない。
    「信じてください、私は無実です。毒が入っているなら、解毒剤を早くください!」
    「二つの名を持つものよ、我等は裏切り者を殺すのに赤と青の毒しか使わん。もし君が正しい解毒剤を飲んで生き延びたなら、君 は生きて帰されるだろう」
    俺の心を読んだように、『一位の者』が言う。
    解毒剤を飲むことに意味があると思わせたがっている。奴等は解毒剤を飲ませたいのだ。
    死んだって飲むものか。
    それとも、解毒剤を飲ませないために、わざと執拗に飲ませたがって見せるのか?
     不確実な推測は堂々巡りだ。
    自覚症状の有無で決めなければ。

     ちりちりと鈴が鳴っている。
    いや、フォークを持つ俺の手が震え、ボーンチャイナを鳴らしているのだ。
    会堂が揺れている気がする。汗が背を伝う。腕時計の文字盤が二重に見える。
    俺は、再び腕時計に右手を…

    2008年08月28日 11:49 by 石瀬醒

  • 2

     「どうだね、今宵の晩餐は」
    『一位の者』が言った。
    「最高です」
    俺は答えた。
    1年余りの歳月をかけてゆっくりと結社に接近した俺は、ついに今夜、入会の秘密儀礼を経て正式に結社に迎え入れられたのだ。
    晩餐は、俺以外の全員が仮面を着けたままであることを除けば、申し分無いものだった。
    手間の掛かった贅沢な料理、いいワイン。
    俺は、何年か振りに寛いで酒を飲み、笑った。

     「ハンス・シュタルテン」
    『一位の者』が俺を『○○の者』ではなく、名前--勿論偽名だが--で呼んだ。
    「楽しんでくれているかね」
    「はい」
    「何度も同じ事を訊く、と煩わしく思わんでくれ。私は心配なんだよ、君が…頭が痛かったり…手足が震えたり…汗ばんだり…動 悸が激しくなったり…してはいないかと」
     俺は不意をつかれ動揺した。とは言え、演技を忘れて呆然としてしまう程ではなかったが。
    「何ともありません『一位の者』、酒はいずれ私を毒すでしょうが、今ではありません」
    「そうではないのだ、ハンスよ、この晩餐は心正しき者には旨し酒、旨し糧に過ぎぬが、二つ名を持つものには赤青の死をもたら す裁きの皿となるのだ」
    「仰ることがよく…分かりませんが」
    「君が心正しき者ならば、分からずともよい。我等を欺く者であれば、既にじゅうぶん分かっている筈だ」
    俺は、曖昧な笑みを浮かべて肩をすくめた。
     いつの間にか、そこここで交わされていた雑談のざわめきが消え、会堂は静寂に包まれていた。
    「はは、酒を不味くするような事を言ったな。
     気にせずどんどん食べてくれ」
    俺は操り人形のような動きで…少なくとも、そんな気分で、料理に手を伸ばした。
    さっきまで美味しかったものが、何の味もしなかった。
    俺はそれが中毒症状の一つに無かったか、とぼんやり考えた。

    2008年08月28日 11:49 by 石瀬醒

  • 1

     「奴等は、裏切り者の処刑に2種類の毒物を使う」

     ドイツ諸侯国に起源を持つ、ある非常に古い秘密結社への潜入捜査を行うため、俺は2年間全く別の人物に成りきって暮らした 。
    訓練の最後に、本部長が変装して俺の仮の住処に現れ、俺に腕時計を渡して言った。
    「奴等は、文明以前の闇の時代から連綿と、2種の猛毒を使い続けている。テトロキシ重合サチルドン酸、別名「赤い死」と、ト リ燐酸エチルホミン、別名「青い死」だ。どちらの毒も、非常にゆっくり、しかし確実に人を死に導く。
     これらの毒は、それぞれたった一つしか解毒剤を持たないが、この腕時計にはその両方が仕込んである。文字盤の縁を右に回転 させれば「赤い死」の解毒剤が、左に回せば「青い死」の解毒剤が腕の静脈に注入される仕掛けだ。
     問題は、この解毒剤はそれ自体猛毒で、体内に毒が入ってない状態で使用すると、死ぬ、という所なんだ。
     しかし、この2つの毒への中毒は、はっきりした自覚症状を伴う。
     「赤い死」を飲んだ者は動悸が激しくなり、全身から発汗する。手足が震える。「青い死」は、頭痛、眩暈がし、目の焦点が合 わなくなる」
    俺はそれぞれの毒の症状を憶えた。
    「2種の毒は互いに働きを阻害し合うので、同時に用いられることはない。
     もし毒を盛られたと思ったら、自分が飲まされたのがどちらの毒か落ち着いて判断して、解毒剤を飲んで欲しい。
     正しい時に正しい薬を飲みさえすれば、死ぬようなことは無い」
    「もし正体が見破られていたら、毒から逃れても生きては居られないでしょう?」
    「まあ、そうだが、奴等はこれらの毒に自信を持っている。生き延びれば脱出のチャンスもあるだろう」
    そこで、初めて彼は笑った。
    「まあ、今回は情報が漏れていないことに絶対の自信がある。君は疑われることすらないだろう。この腕時計は、単なる保険だよ 」
     俺は、「今回は」の部分に少しだけ不安を感じた。

    2008年08月28日 11:47 by 石瀬醒