自分の好きなものが嫌いになるショートストーリー
例えば、私はコーヒーが大好きなので、読んだらコーヒーが嫌いになる文章を考えます。
例)
空腹だというのに、社長はまたコーヒーを淹れてきた。
「どうだね、コスタリカの豆をね、自分で焙煎したんだよ。
この香り、たまらんねぇ」
「はい、深いですねぇ」
(不快ですねぇ)これは心の声。
頭がクラクラしていたが、真正面から期待に満ちた目で覗き込む社長の顔が容赦なくプレッシャーをかけてくる。
一口啜ってみた。
さっきの一杯で火傷をした舌には、何の味も感じない。
しかし、ここで追従しなくては、今まで我慢した意味が無い。
「うん。これは美味しい」
「そうか、よかった。やっとわが社にもコーヒーの味が分かるモンが入ってきたか」
社長は満面の笑顔だ。
「他の連中は家に来るたびいっつもカフェオレだ。ワシのコーヒーは濃いと抜かしおる。
しかし、キミは違うようだな、武田君」
しまった…
「え、ええ。勿論ですとも…」
「よし、これからキミにだけは毎回ワシ特製超濃い味コーヒーだ。ははは!」
遂に高笑いの社長の顔を見て、俺は力なく微笑んだ。
これでいいんだ…
いまいちですね、これは。
私も、もっと『嫌いになる』文章で参戦します。
2008年08月29日 15:53 by 石瀬醒
「一度受け取ったものは返せない。1枚10フランだ」
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まあ、凄くゴーインなちらし配りさんですね...あきれた。
コメント代わりに
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初めての海外旅行、醒は、パリが大好きになっていた。
ロンドンと比べて、都会なのにどこか土を感じる街の雰囲気、ピンと張ったように乾燥した清々しい空気、そして街角の古びたカ フェ。
醒の入ったカフェには、店の奥のソファに大きな猫が寝そべっていて、いかにも主人然と客たちの動きを薄目で眺めていた。
テーブルクロスに直接置かれるサンドイッチは、パソコンのキーボードほどもあって食べ応え抜群。
醒は、本で読んだ通りの、ランボーやヴェルレーヌのパリに、満足した。
どこへだったか、移動の途中に、メトロの入り口でチラシを配っている学生らしい女性を見た。
何だろうと思い、一枚もらいにいく。
手にとって中身を見ると、政治関係のチラシだった。
学生は英語を話していたので、
「私は観光客で、フランスの政治は関係ない。これは返す」
と、カタコトの英語で伝えた。
しかし、女子学生は
「一度受け取ったものは返せない。1枚10フランだ」
とかなんとか言ってきた。
「金の問題じゃない。興味のない人間に配って金をもらって、君はそれでいいのか」
と言うが
「ダメだ、よこせ」
とまくしたてる。
そんなやり取りが2分くらい続いたろうか、私は彼女にコインを渡し、
「どうぞ。これで満足ですか」
と言いながら、目の前でそのチラシを破って地面に叩きつけた。
相手の反応も見ずに振り返って歩き去る私の足元に、硬貨が投げつけられてチャリン、と鳴った。
おそらく言葉がうまく通じないフラストレーションが互いにあったのだろうが…
醒はパリが、少し嫌いになった。
2008年09月25日 13:23 by 石瀬醒
フランス。お約束のパリ。なんとか飢え死にしないように、旅行会話帳をさらっておいた。小説というか...ほぼ事実なんですが 。
**
うろうろ歩き回ってどこかのショッピングセンターにたどり着き、レストランを探す。
「一人の席を...」
と慣れないフランス語で言ったのに、そのお店の人はなぜか
「電話?! 電話はないよ!!」
と英語で言った。私の黄色い顔を見たから、フランス語なんて通じるわけないと思ったのだ。
あちらが昼時で忙しかったにせよ、ショックだった。
私は黙って空いている席にすわり、そのうち別の人が注文を取りに来てくれ、なんとか注文した。ぺらぺらしゃべるのが目的じ ゃない。食べることが目的だった。食べてなんぼだからいいじゃないか。
スーパーマーケットで。サイズがよくわからない。「歩き方」よく見ておけばよかった。その辺の店員さんをつかまえて、なん とか試着したい旨を告げる。そのおばさんは、試着室があるのに「このサイズはXXだよ! 試着はできない!」とだけ言い残して去 って行った。別に普通のカットソーだったのだが何で試着不可なの?
フランスの新幹線TGVに載ろうとして、n号車、どこですか? 真ん中あたりだよ、行ってみる。ない。もう一度聞く。だか ら真ん中だってば! それだけ言ってぷいと顔をそむける。別の人に聞く。先頭だった。嘘ばっかり。
私の黄色い顔が恐いの? フランス語がわからない外人だから話すのが嫌なの? なぜ言いたいことだけ言って、後は無視する わけ? こういう人は何割かいる。もちろん親切な人もたくさんいた。
ちょっとだけフランスが嫌いになった。
こちらこそ、よろしく。
まず、連投大歓迎です。
この作品のように、その前の仲間との楽しい雰囲気の演出、さらに炭酸を美味しく感じさせる喉の渇きという一種の伏線の提示と いった、必然性のある長文は長さを感じさせません。
実は私は会社で眠くなったときにチリペッパーをコーラに入れて飲むということをしてましたので、文中の飲料の味はなんとな く想像できます。
タバスコは独特の香りと酸味があるので「浜辺に押し寄せる波の上乗せ」がさらにキビしいものになるんでしょうね(笑)。
既存のどのトピにもどんどん投下してください、また、創作課題トピック出題、お願いします。
☆ほかの皆様へも
自分の立てた出題トピに自分が書けなきゃいけないということはありません。
「こんなん誰にも無理だろう」というような制限事項ほど面白い作品を生み出すものです。
どんどん出題してくださいね!
2008年09月02日 09:25 by 石瀬醒
初めまして。面白そうだったので参加させてもらいました。
霞弐屍兎と申しますー。面倒だったらカニでもいいです。
挨拶代わりにちょこちょこっと書いてみました〜。1000字超えたので連投です><スミ
マセン。
俺は自転車を飛ばしていた。先日ペダルが飛んで、チェーンがイカれてしまって修理はしたもののスピードが出ない。甲高い金 属音だけをかきたてて、必死に漕いでるのにも関わらず、全然スピードが出ない。予想外だった。想定の範囲外だった。くそ。
俺は、必死に漕いでる最中、腕時計を確認する。十八時五十九分二十三秒……十九時の待ち合わせギリギリか。
ドリフトおぼしき曲がり方をして、飲食店の駐輪場に自転車の身を躍らせる。決まった!
「くそ、間に合いやがった。」
友人の一人が時計を見ながら舌打ちをした。へへ、ざまあみろっ
全身で呼吸をしつつ、友人たちの輪に入る。
今日は、単に「暇だから夕飯一緒に食わない?」との誘いだった。俺も暇だったからOkしてしまった。
ガラス戸の重い扉を開けて中に入る。涼しい空気が流れ込んできて心地がいい。でも温度差に体がついていけなくて、瞬く間に 快い気持ちが大きなくしゃみへと変わる。そして、爆笑の渦に巻き込まれる。こら……店員さん困ってるぞ。
「何名様ですか?」
「6名です。」
俺が、荒い息の合間を縫っていった。てかおい!なんで俺なんだ!?
「ではこちらの席に……。」
俺たちは、奥のほうの少し大きめの席に案内された。他の客とは大分隔離された場所だ。この人分かってるね……。うるさくな ること。
イタリアンレストランと、銘打たれたこの空間。もちろん出される料理もイタリアン。
俺たちは、他愛も無い、どうでもいい、つかみどころのない会話をしながら時間が過ぎるのを忘れていった。
さて、俺は、ドリンクバーからコーラを持ってきた。俺は炭酸飲料が大好きだ。それは
もう小遣いの半分をそれに使うほど好きだ。大好きだ。
そして、コーラのコップを置いて、届いていた食べかけのスパゲッティを飲み込む。チ
ェーン店だけに美味い。……そうでもないか。
「あれ……俺の携帯は?」
途中でそんなことを友人が言い出した。
「マジかよ……探してくれー……。」
仕方ないので俺たちは探し始める。隔離されているとはいえ、時間が経って周囲の客人も増えてきた。そのため机の下にもぐり こんでる俺たちは変な目で見られる。
「いってぇ!お前蹴るんじゃねえ!」
「ちょ!ズボン下ろすな。」
「うるさいお前ら!あのオッサンに変な目で見られてるじゃねえか!」
半ば戦争状態。
「お客様……他のお客様の迷惑になりますので、お静かにお願いいたします……。」
「す、スイマセン……。」
そして店員さんに注意される始末。しかも何で俺が謝んなきゃならないの?
「あ、ポケットに入ってた。」
とかいう最悪のおちでこの戦争も終結を迎えた。御疲れ様でした。
「あぁ……氷溶けちゃったよ……。」
そう言いながらコーラを飲む。携帯を無くしたと騒いでいた友人がニヤニヤしているの
に気づく。
(絶対こいつ楽しんでたな……)
と、思ったのはつかの間。コーラの異変に気づく。
炭酸のしゅわしゅわはいつもと変わらない。いつもとおなじ酸味だ。でも……何か別の
酸味が隠れている。そして、海で騒いでる波にさらに波が上乗せされて砂浜に押し寄せるように、超刺激的な酸味が俺の舌を貫い た。
言ってしまえば超辛かった。友人の近くにあるタバスコの瓶が半分近くなくなっている
。
炭酸の酸味に隠れてやってきたタバスコは、喉と鼻の痛みを伴わせ、堰(せき)がとまらない。喉がひりひりする。目に涙がた まる。
ゲホゲホと堰をして涙を流す俺をみて、友人たちは大爆笑。挙句携帯でムービーをとられる始末。
喉が飛びでてくるんじゃないかってくらい堰をした俺は、この日から炭酸飲料と辛さが
嫌いになった。
実はこれ実話です。でも大分内容変えてるんで一応自作です。タバスコ入れられて、二、三日舌の感覚麻痺しました。でもまだ炭 酸大好きです;:
では、今後ともよろしくおねがいします〜
俺は猫が大好きだった。
身長が5cmになるまでは。
生化学者の俺が、いかなる手段で奇蹟のような発明を成し遂げたかは、長くなるからここでは説明しない。
とにかく、ほんの悪戯心で、例えばマンションの隣の部屋の美人OLさんの部屋をこっそり訪問してみようか、などという他愛も 無い、無邪気な、少年のような純真な心で俺は薬を飲み干したのだ。
勿論元に戻る薬は左手に持ったまま。
…のつもりだったのだが、あまりの苦しさに俺は机の上に薬を置いて床に倒れてしまっていた。
気が付くと、薬は頭上遥かの机の上。
不安を感じた俺は、とりあえず隣の美人は置いといて、薬の元に行こうと本棚北壁の登攀を試みた。
そこに、奴が現れた。
チコ(1歳4ヶ月)だ。
殺気を感じて振り向くと、書斎のドアの隙間から、まん丸に見開かれた奴の目が見えた。
最高に興奮している目だ。
俺は必死に本棚の3段目まで登った。
猫にとって、自分の身長の5倍位までは楽勝の高さだ。
奴は、軽々と本棚の3段目に跳び上がってきた。
俺は本の隙間に入り込み、身を屈めた。
奴の手が隙間を探る。
「あつっ!」
爪の先がかすった程度だったが、俺の右腕の皮が引き裂かれ、血が流れた。
この大きさでは、爪の一掻きで心臓を持っていかれる。
俺はさらに奥に体を押し込み、本の裏側に回った。
渾身の力で、本を押し出す。
チコは、そうした攻撃が来るとは予想していなかったのだろう、脇腹を本に押されて転落した。
俺はその隙にさらに隣の本の裏に潜り込む。
猫の体は柔らかく、10mもの高さからの落下も無傷で切り抜ける。
本棚の3段からの落下は、彼女の興奮を煽っただけだった。
しかも、今度は落下で出来た隙間に頭を押し込み、自分も本の裏側に潜り込もうとしている。
後ろから、バサッ、バサッと、本の落ちる音が聞こえた。
俺は振り向く余裕も無く、必死で本の後ろに体をねじ込み、押し分け、匍匐前進し続ける。
俺の指が、ガリっと本棚の側板を引っ掻いた。
「チコっ!」
焼け糞で、俺は大声で奴を叱ってみた。
一瞬、チコの動きが止まった。
しかし、猫は、犬ほど社会性を持たない。
振り向いて、ご主人様の姿がないことを確認すると、奴はまた動き出した。
俺は、奴に最後に餌をやったのがいつだったか、思い出そうとした…
2008年09月01日 16:44 by 石瀬醒
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