赤猫と呼ばれた女 2
その女は、片時も口を閉ざすことなく、今までに請け負った仕事の事、支払いをけちった雇い主に降りかかった災難の事などを喋 り続けた。
不思議なことに、その間も女の前にあったドーナツとコーヒーは一定のペースで減り続ける。
「で、質問は?」
フランス訛りの全く無いアメリカ英語で女が聞く。
「君の今言った様々な仕事については、概ね裏が取れている」
俺は手元の資料を見ながら言った。
「俺は仕事が出来るヤツが相手なら、そのスタイルに文句はつけない」
女が再び口を開くのを、手で制する。
「これは好奇心からなんだが、一つだけ、教えてくれ」
「なに?」
女は機嫌良さげな笑みを浮かべる。
自意識過剰気味の彼女には、自分への好奇心は全て歓迎すべきもののようだ。
「君の赤猫、“Chat Rouge”という通り名だが…」
女はすぐにもフランスで彼女が赤猫という綽名で呼ばれるようになった経緯を話し始めそうだった。
が、俺は先を続けた。
「あれは、フランス語の“シャ・ルージュ”じゃなく、“チャット・ルージュ”、お喋り口紅、って英語なんじゃないのかい?
君はミルウォーキー出身で、一度も国外で暮らしたことが無し、『黒髪には赤い口紅が似合う』と考えてるのか、いつもその派 手すぎる紅を引いている」
女と会ってから初めて、2分間もの沈黙が訪れた。
「いや…別にいいんだ。俺は君の抱いている自己イメージに文句をつけるつもりは無い」
俺はあたふたしながら、そして自分があたふたしていることに何か不当なものを感じながら、仕方なく言い訳をした。
「君の手際は文句無く冴えている。音も無く獲物に忍び寄る、まさに赤猫と呼ぶに相応しい」
女が上目遣いにこっちを見る。
「洗練されているという点で、君は充分ヨーロピアンだ。例えアメリカで育ったとしても」
やりすぎかと俺は思ったが、彼女の唇は喜びの弧を描いた。
「いいわ、仕事の話をしましょう」
ちっともフランス訛りでない英語で、再び機嫌良くなった彼女が言った。
2009年05月25日 16:44 by 石瀬醒
誰かが書いたら応えなければならない。
それがコミュ主の宿命。
と言うことで書きました。
僕はさりげない日常描写が苦手なので、やっぱりこんなことになっちゃいます。
しかも、1000字以内にギリギリ収まらないし…
赤猫と呼ばれた女 1
「フランスからやって来た殺し屋赤猫」
その女はそんなふれこみだった。
実際、アメリカの友人に問い合わせた答えもこうだった。
「確かに写真の女は、“シャ・ルージュ”と呼ばれているらしい。ただし、その出自は不明」
シャ・ルージュ。
美しきフランスの殺し屋にふさわしい名前だ。
と、思っていた。
実際に会うまでは、だ。
2009年05月25日 16:43 by 石瀬醒
二次創作の作品なので
…どうかな~?(不安)というカンジなのですが
一応、3つのテーマを盛り込んで書いてみました!
短編は苦手なので
イロイロ未熟ですが、今はコレが精一杯 (>_<)!
【 珈琲と猫とフランスで… 】
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2009年05月24日 23:26 by sudou*
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