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2010年03月22日 08:18  by 石瀬醒

コメント一覧 1件中、1~1件表示

  • 米澤穂信氏を読んで

     若者向け、というか中高生向け作家をまず読まない私だったが、全くの気まぐれから『ボトルネック』を読んだ。
    一人称文体、多用される主人公の内面描写、苦手な要素の目白押しだったにも拘らず、秀逸なネタにやられた。

     新本格派推理作家が大上段に構えて使うようなトリックがあるわけではない。
    いや、『トリック』ではない、というべきか。

    作為による『トリック』を米澤氏はほとんど使わない。
    しかし、出来事の中の不条理を見つけ、その裏の理を探り出し、やがて理の陰に潜む情を明らかにすると言うその手法は、極上のミ ステリーのそれなのである。

     その後、『氷菓』『愚者のエンドロール』『クドリャフカの順番』と読みすすみ、作者の成長の跡を辿ると、もう一つ、私は惹き 付けられるものを見つけた。

    小さな『トリック』、というか、ネタの核。それ一つだけを適切に処理してショートストーリーを一つ作る。
    そういったショートストーリーを連ねて中篇を形作る。
    そのようにして長い作品を作るというのは、作文初心者にとって非常に有効な手法ではないか、と思ったのだ。

    米澤氏はそうした手法で、非常に密度の濃い物語を作っている。

    私はここで、「ネタとして誰かに簡単に話すには弱いが、物語さえ適切に構成すればドラマの核となる小さなトリック」の処理を練 習しようと思う。

    2010年03月22日 10:53 by 石瀬醒